西野りーあ詩集「うろくずやかた」

山田隆昭
「詩と思想」より

 西野りーあは、徹底して実の世界を透視する方法を採る。この詩集は「相聞歌」で始まり、そして終わる。だがこれは、世間にあまたあふれるいわゆる恋歌ではない。現実の世界を突き抜けて在るものへの恋歌と言ってよい。
 西野は"巫女ではなくなるそのかわりに/私は別のものを名乗る/誰かであった私は/もはや誰でも無くなるのだ"(失寵)という詩句に象徴されるように、肉体を得、世俗にまみれることによって喪失した霊力を取り戻そうとする。このことは"両親からは確かに肉体を受け継いではいるけれど、魂は他所から来たものであり、本当の「魂の故郷」や「魂の親族」があって、仲間たちがいるのだと感じていた"(後書き)という生命の原風景をみる視点とも符合する。"相聞"とは、単なる恋歌ではなく、"異界"への通路を開こうとする意志であるだろう。
 このように"異界"を感受してしまった西野は、当然のように現実の時間や空間を超越して自在にそこを行き来する。そのスケールは実に大きい。そこから紡ぎ出される詩篇は、美しく、戦慄的であり、生命の永遠性を提示してくれる詩集として異彩を放っている。




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