エクソドス



左目に狂気がはりついて取れないので
  刃物で削ってみた
血が流れて服を汚すので
  タオルで押さえながら階段を降りていった
四時に迎えに来てくれるはずが 五時 
五色の夕焼けたなびくのに紛れて あの人は来る
    たそがれどきの力に 紛れて あの人は来る
  花たくさん抱えているけど 燃やしてしまうの
薔薇燃える香りが 好きだって言うの

海に着く頃は真っ暗で何も見えやしないと
  目を押さえたまま抗議する私に
    あの人の笑みが 透き通って優しい
モーゼの話のように
  空の雲が割れて金の光が降っている
   夕闇の中に 空の裂け目は 血の色をたなびかせている
    “今日は古代の暦で空が割れる日” とか
   知ったか振りして よくご存じね
海のあたりまでそれは続いて
  海の向こうに金の溶岩が
オレンジや赤や薄青や紫をまつわらせて 瀑布となって
  落ちているのが 見えると 言うわ



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(c) 1996-1997 Leea Nishino