決壊の領土にて
        −妖異の時代−



   妖霊の時間がなつかしげに
     あなたの 窓辺を 濡らす とき


        
     朝焼けと夕焼けの匂い立つ
   うるわしい凶夢の
     柔らかい腕が
       あなたを 抱きしめる

         ―  凶夢髪なびく
           彗星の七彩、五月  ―


      果て無しの大海は
    この世界球をのみ込んで
      不可視の
        水域に
          なだれてゆくから いまは
      燃え続ける悩乱の
        物語を書きとめて、さあ、
            弧を描く指で


             ―  凶夢髪なびく
                安息の七彩、外海  ―


        いとおしい 妖霊たちの
          濡れたまなざしが
            無数の吐息捲いて
          見知らぬ 明け方の 岸辺に
            貝殻を拾う夢を 待つ。



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(c) 1996-1999 Leea Nishino