哀悼歌



夏の陽がかくも残忍であった事を
  あなたは知っていたのか 百合の人よ
    なつかしい魔物たちは ことごとく塵になる
あなたは日輪を追って旅に出るが
  またいつか戻っておいで
    花を飾って待っていよう

  少女の輝きを再びまとって
    あなたは闇の城から出ていく
      傲頑な貴族のおもてを捨てて
        人の世の交わりに入って行く
    真珠を送ろう 六月の人よ
      深い海を思い出しておくれ

    塵にまみれた生身の苦しみに
  あなたは沈むのだろうか
    暖かい血の巡る幸福に
      歳を重ねてゆくのだろうか
  手紙を送ろう つるぎの人よ
あなたの愛した呪言の文字で
  金のインクで手紙を送ろう

返書を書いておくれ
  氷河の夢に呑まれる事なく
    鳥たちの翼に乗せて
      返書を寄こしておくれ
  あなたが君臨した異形の物語は
    黄金の頌歌の元に
      羽毛となって散り敷くだろう



←BACK HOME NEXT→

(c) 1996-1997 Leea Nishino