Creepy Cute Coffinn
(とじこみ付録のような怪しいおまけつき)


加護 ユリ


 柩めあてで映画を観に行った人、はーい!(勢いよく手をあげる怪詩人) 軽々と柩を肩にのせた傷だらけの無表情な男、「棺桶のなかには一体誰が?」のコピーにまんまとのせられ駆けつけた夏休みの映画館。予想以上に混んでいてやっと座った席はひとつ隣が妖婦ならぬ妊婦さん(マシーンみたいな子供を生みたいのか?)ハズレ〜残念!と、がっかりした映画で柩が映ったとたんに瞳がカボチャ提灯のように輝く、という不謹慎な人外です、ワタクシ。実際、異国の墓地は庭園か楽園のようで心が躍る。特に印象に残っているのは、花と蝋燭に飾られた「死者の日」の夜の墓地(メキシコを舞台にした某映画)あの墓地のどこかに私の墓地があるかも......と、燭台片手にさまよいたくなるほど魅惑的。
 もう一度質問。柩グッズを購いに映画館へ行った人、はーい!(迷わず手をあげる怪詩人)
十字架つき棺桶型キーホルダー(某吸血鬼ハンター映画劇場オリジナルグッズ)灰色の手が棺桶の蓋を動かす仕掛けつきマグネット&クリップセット(某お化け屋敷映画キャラクター商品)どれも、手のひらにのる小ささが嬉しい。
 国内にいるのは冠婚葬祭のときだけであとは海外旅行という優雅な有閑婦人が新しい火葬場がきれいだったとさんざん褒めそやしたあとでひとこと「だって、いずれは私たちもいくところですもの」老人ホームで悠々自適の生活をする老人たちがあっと驚く大胆な計画をたてる邦画の予告で棺桶の寝心地を愉しそうに試していた。いずれは私たちも柩の寝心地を知る日が訪れるのだ。
※「ゴはゴシックのゴ」うろくずやかた遠出編「カはカンオケのカ―――それは、長方形ではなく」に続き本編をごゆるりとキャンドル片手にご観覧くださいませ


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